本の紹介(No.1)

「トラック経営革新」(日本創造経営協会編)

  日本のトラック運送事業者数は約5万社、従業員数は約119万人
(うち運転者は89万人)に達する。全日本トラック協会が、1997年に
実施した調査によると、日本のトラック運送事業者は、次のような問題を
かかえている(同書72ページ)。
  @厳しさをます市場競争
  A経営利益が減少、事業は現状維持が半数
  B事業規模による格差が出ている
  C特定荷主への依存度が高い
  D輸送の付加価値に遅れ
  E荷主のニーズとトラック運送事業者の意識のずれ
  F情報化への意欲は高いが、コンピューター活用は不十分
  1999年7月、中小企業近代化促進法に代えて、中小企業経営革新
支援法が施行された。
  中小企業者が新商品・サービスの開発、それを生産する方式、販売
方式等の開発、そのための企業間のグループ化や、研究機関・大学等の
ネットワーク形成等を内容とする「経営革新」を支援する。これがこの法律の
中心となっている。
  そこには既存の事業・経営システムの見直しと同時に、新事業を開発
していく旺盛な企業家活動が期待されている。物流システムの中心を担う
トラック運送業界も同様である。それぞれのトラック運送企業が環境変化に
対して積極的に生き抜いていくために「経営革新」を行う創造的経営意思
決定力が求められている。
  トラック運送業界では、この中小企業経営革新支援法もとづいて、経営の
高付加価値化を実現することが急務となっている。
  本書は、トラック運送業経営者が「企業家精神を持ち、時代の要請に
合った経営革新をどう実現するか」という課題について、豊富な事例を交えて
具体的に解説している。「経営革新への決断」、「ネットワークを活かす企業群
経営」など魅力的テーマが扱われている。「戦後のトラック運送業の歩み」の
部分は、読み物として面白かった。(O.R)
(1999年・同友館・1800円+消費税)

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