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本の紹介(No.2)
「刑事政策」(岩井宜子著)
本書の著者岩井宜子(いわい・よしこ、旧姓安楽城)は1941年
(昭和16年)神戸の生まれ。東京大学法学部で団藤重光教授のもとで
学び、弁護士・金沢大学教授を経て、現在は専修大学法学部教授。
つい最近まで司法試験委員をつとめていた。
本書は、大学生向けの講義テキストとして作成されたものである。
「目次」を開いてみよう。「犯罪学の歴史」「精神障害と犯罪」「犯罪社会学」
「死刑」「少年法」性犯罪への対応策」等々興味をひくテーマが扱われて
いることがわかる。
岩井宜子は長年にわたり女性犯罪に関して研究を重ねてきた。
20年近く前に結成された女性犯罪研究会の有力メンバーの一人であり
『女性犯罪』(1987年・立花書房)などの共著もある。長年の女性犯罪
研究の成果をふまえて書かれた「犯罪の男女比較」(18ページ)以下の
部分は精彩を放っている。それによると、戦後間もない頃の1946年
(昭和21年)、刑法犯検挙者数は、男子40万8760人に対し、女子は
3万3819人。女子のウエイトは7.6%と10%以下であった。この数値は
上昇する傾向にあり、1963年に11.3%、1997年には22.4%にまで
上昇している。この数値は、ほぼ「欧米並み」だという。この傾向については、
著者は「戦後の女性開放と(女性の)社会進出に相応して増加している
ようにみえる」(20ページ)と分析する。
女子刑法犯の罪名別検挙人員(交通関係業務上過失を除く)を
1997年について見ると、総数での女子のウエイトは22.4%(前述)
であるのに対し、窃盗が31.5%と高く、さらに窃盗犯の内訳の万引きに
なると51.7%と、男子を上回る数値を示す。スーパーマーケットの普及が、
万引きに「寄与」(?)しているようである。また、殺人についての女子の
ウエイトを見ると17.3%であるが、内訳としての嬰児殺(22人)は92.1%と
極めて高いウエイトを示している。核家族化が進む中で孤立した主婦が
誰にも相談できず犯罪に至る。そんな社会病理現象を著者は示唆する。
また、女子の殺人の新しい傾向として、保険金目的の殺人、強盗殺人、
身代金目的の誘拐殺人など、新しいタイプの殺人が出はじめている
(殺人罪の男性化)という指摘も行っている。(O.R)
(1999年・尚学社・3500円+消費税)
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