本の紹介(No.3)

「都立桃耳高校」ー神様おねがい!篇ー(群 ようこ著)

  本書は、こと人気作家の群(むれ)ようこの手になる1970年の
女子高生の物語だ。
  「私、タヤマシゲミが東京都立桃耳
(ももみみ)高等学校に入学する
までは、すったもんだの展開があった」という書き出しで、この物語は始まる。
  高校受験を控えて、シゲミは「ティーンルック」「セブンティーン」といった
女の子向けの週刊誌を手当たり次第に買い集める。勉強するフリをして
深夜放送を聴く。「オールナイトニッポン」「ザ・パンチ・パンチ・パンチ」など。
幸いにも、タヤマシゲミは、東京都立桃耳高校入試に合格し、晴れて女子
高生となった。入学式で校長先生は「大切な高校時代なのですから、いい
大学に入ろうということばかり考えないで、よい思いでと友達を作りましょう」
と話す。”私”(タヤマシゲミ)は、「勉強しなくてよろしい」と解釈してラッキー、
ラッキー、大ラッキーと喜ぶ。
  ”私”は1年C組。カジヤマくんというカッコいい男子生徒がいる。休み
時間にカジヤマくんが教室の外に出ると、廊下にいた他のクラスの女子生徒
たちが「きゃーっ」と喜びの声を出す。カジヤマくんがだれを”彼女”にするか。
これが女性とたちの話題の中心だった。
  ”私”は剣道部の「朝帰り」というあだ名の男子生徒に思いを寄せる。
いつも眠そうな顔をしているから「朝帰り」というあだ名。体重60キロと太めの
”私”は、特にハンサムでもなく目立たない「朝帰り」にひかれる。でもそれは
1人胸の内に秘めておいた。
  このようにして1年C組の日々は流れていく。クラス対抗バレーボール大会、
文化祭、「地理歴史研究部」の夏合宿といった行事の合間に三島由紀夫の
割腹自殺などの現実の事件が、高校生の話題としてふりかかってくる。
  群ようこの筆力と機知でもって、本当は、「どうってことない」かも知れない
物語を面白く読むことが出来た。あっという間に読んでしまったというのが
実感だ。50歳代の部長から20歳代のOLにお勧めの本。(O.R)
(2000年・新潮文庫・438円+消費税)

前のページに戻る