本の紹介(No.4)

「定年の前と後の事典」(北 連一著)

  定年まで出版社に勤務した1939年生まれの著者が「自分の体験」を
もとに書いた本。定年前後における年金、雇用保険、健康保険、住民税、
退職金にかかる税金、生命保険・住宅ローンの見直し等の様々なテーマに
ついて解説している。
  金銭がらみも諸手続きや資産のチェックのプロセスは、実用的で役に
立つ。一方、第6章「定年退職後一年 新しい人生へ踏み出す」にもり
こまれた生活上の心構えとその実践にも本書の特色がある。例えば、
近所のミニスーパーでアジやカマスを買ってきて自家製の干物を作り、
油揚げとみじん切りのネギで、酒の肴を作る。
  こんな「楽しみ」を見つけることも必要だ。現役時代から長年参加して
いた地元の野球チームをつうじての人間関係も緊密となる。この点に
関しては、多くの読者は、ただうらやましく思うだけだろう。
  子どもは独立して妻と2人だけの毎日が続く定年後。著者は「男にとって
『わかってくれる妻』は、最大の願望です。しかし、自分のことをわかって
くれる妻をもつことが幸せにつながるかというと、必ずしもそうはいかない。
こんなところに、人生の魔訶不思議さがあります」と本書の176ページで
述懐している。
  また、別なところでは、「老後の人生とは、夫と妻の距離の取り方に
よって決まってくるのではないでしょうか?」とも問いかけている。定年後の
経済問題は極めて重要である。加えて、仕事を辞めて自宅にいる時間が
長くなる夫。
  長年の生活習慣を乱されることにいらだつ妻。少し距離を置いたほうが
よさそうである。この「距離」の指摘は、本書の重要ポイントだ。
  編集者だったという職業がらもあろうが、毎晩大酒を飲んだ結果体は
「胃潰瘍、高血圧、糖尿病,痛風等」と悪いところだらけ。定年直前に集計
した預貯金総額は300万円。このように、かなりプライバシーをさらけだして
いる点にも本書の特徴がある。(O.R)
(1999年・法研・1200円+消費税)

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