本の紹介(No.8)

「語り継ぎたい命の尊さ
  −阪神大震災ノートー」(住田功一著)

  阪神大震災に関する様々な記録が多方面から出版された。写真集、
一般市民・学生・消防士・警察官などの手記、地震学、土木建築、病院・
工場・学校の罹災記録、詩、小説、エッセイ等々…。本書は阪神大震災
関連の文献としては以下の点がユニークである。
  ・高校生の社会科副読本として書かれている
  ・約80ページ弱と薄い本である
  ・写真・図・表を多用し、わかりやすさを配慮している
  ・著者自身が震災の被害を受け、かつNHKアナウンサーとして”報道”
   にも携わった
  ・阪神大震災だけでなく、原爆や地下鉄サリン事件などにも言及しながら
   「命の尊さ」を訴えている
  著者住田功一(すみだこういち)は、NHKアナウンサー。1960年、
神戸の生まれ。1983年神戸大学を卒業し、熊本・鳥取局に勤務し、
1992年から東京・放送センターに勤めている。現在は早朝(朝5時)
からのニュース番組のキャスターをつとめている。
  本書は阪神大震災が、「一地方の出来事」として関心が薄れないよう
配慮がされている。広島の原爆投下以外でも、1943年の「鳥取大震災」
の写真(20ページ)が挿入されていたり、黒磯市の女性教師刺殺事件を
テーマに「命の大切さ」を語る。本書は高校生向きの本である点から、
神戸市灘区六甲町で震災後の火災で亡くなった3人の神戸大学生の
出身高校(名古屋市立向陽高校、兵庫県八鹿高校、静岡県立浜松
北高校)が付記されていることにも編集上の配慮がされている。
  高校生用として書かれた本書であるが、幅広く社会一般に話題を
呼んでいる。30歳代、40歳代、あるいはそれ以上の世代の人々が
読んでも十分に耐える内容である。家庭や職場の防災を考える上で、
全世帯必携の書である。
(O.R)

(1999年・一橋出版・600円+消費税)

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