本の紹介(No.13)

「二十世紀物語」(歴史探検隊著)

  20世紀に登場した数々のモノについて語った本である。ここで「モノ」
というのは、例えば計算尺、赤チン、カバヤ文庫、仁丹塔……、そして
新しい(?)ところでは紅茶きのこ。これらのモノについての情報とエッセイが
ぎっしりつまっている。
  童謡歌手の項を見てみよう(248n)1950年代を中心に童謡ブーム
(という言葉があったかどうかは分からないが)があった。
  川田正子・孝子、伴(ばん)久美子、近藤圭子、古賀さと子、安田祥子・
章子姉妹、小鳩くるみ等々。これらの人たちの名前を見て「懐かしい」と
思ったり、ラジオ番組「ちえのわクラブ」(提供・千代田生命)を思い出したり
するのは、50歳前後以上の人々であろう。もっとも、安田祥子・章子
(由紀さおり)は、いまだに童謡分野で(も)活躍中である。
  玄米パンが関東大震災の産物であることを本書で初めて知った(196n)
  「玄米パン売り」という商売が関東大震災後の焼け跡に出現した。
大太鼓やトランペットをにぎにぎしく吹き鳴らしながら、残暑の街を流し
歩いたという。
  白いワイシャツにカンカン帽、大太鼓をたたくその姿は、一見チンドン屋の
ようだった。最後に、本書に苦言を呈したい。著者が歴史探検隊という
「団体名」になっているにもかかわらず文中に「私」というキーワードが頻出する
ことについてである。
  「私」というのは個人である。顔の見えない「私」というのは気持ちが悪い。
「戦前お母さんがバスガールをしていたという『私』さん!あなたはいったい
誰ですか?」と叫びたくなる。
  最後の「あとがき」に、「歴史探検隊 斉藤志美子」と書いてある。ということは、
「私」は斉藤志美子ということになる。本書の編集者は、このことについて、じっくり
考えて反省してほしい。(O.R)

(2000年・文春文庫・448円+消費税)

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