本の紹介(No.25)
「ちゅうごく生活ひとりごと」 (根本 均著)
1997年の夏まで、中国では「外国人料金」が当たり前。航空券は1.5倍、
博物館・公園などの入場料は一般の中国人の2〜3倍の値段だった。
中国へ旅行する外国人、中国で生活する外国人に評判が悪かった
この二重価格。97年に中国入りした本書の著者は、幸い(?)にも最後の
二重価格を経験した。
最初は真面目に外国人料金を払っていた著者である。しばらくすると、
同じ顔をした東洋人のことであり、様々な”手”を考えた。
その一、おつり作戦。入場券を買う際に何も言わず100元札を出す。
つり銭が多ければ中国人として扱ってくれたことになり、少なければ
外国人として扱われたことになる。何度かこの方法でトライする。しかし、
結果は全滅。服装で外国人とわかってしまうらしい。
その二、少々中国語が分かるようになると「切符1枚」とだけ中国語で
言い、中国人料金を支払う作戦をとる。97年に西安へ一人旅をした。
1日タクシーを借り切ったことに気をよくした運転手が知恵を授けてくれた。
「お前は今日から福建省出身ということにしよう。服装には難点があるが
兎に角福建人で押し通せ」というもの。著者は早速兵馬傭博物館で実施、
見事に成功した。それ以来北京でもどこでもにわか中国人で通ったという。
同じ方法で失敗した日本人もいる。中国人だとの主張がばれてしまった。
そこで彼は機転を利かし「ごめんなさい。本当は香港人だったのです」と
主張した。チケット売り場のおじさん、笑って看板を指差す。そこには何と
「香港人も外国人とする」と書いてあった。
以上は、ずっしりと厚い本書の236ページにある「二重価格」の抄録。
損保マンの著者らしく「保険をお忘れなく」というタイトルもある(239ページ)。
ここでは旅行中にクモ膜下出血などで、中国旅行中に入院した日本人
旅行者の例をあげている。
クモ膜下出血などで旅行中に倒れた場合、中国の病院に入院する。
入院の際どこの国でも問題になるのがお金。中国では最初に5万元
(約75万円)ほどの預納金を請求される。お金の支払い如何が治療の内容、
ひいては生命に関わることになる。
解決策としては、日本を出発する際「海外旅行傷害保険」に加入しておく
ことしかない。
クモ膜下出血の場合、出血の拡大を防ぐ意味で中国の病院に当分の間
入院することもあり、状況を見て日本に帰国することになる。
帰国する場合はもっと大変だ。病院から空港までの輸送、航空会社との
打ち合わせ、日本到着後の病院の受け入れと輸送、さらにこの間の医者の
付き添いなど。幸いこれら緊急輸送を手がける専門の医療サポート会社が
あり、こういう会社に任せることになる。問題は費用。このようなケースでは
数百万円から1千万円は覚悟しておかなければならない。「海外旅行傷害
保険ではこの種の出費や家族の呼び寄せ費用を保証する特約も用意されて
いる」、と損害保険会社に勤務する著者は、さりげなくPRする。(O・R)
(2000年・文芸社・1,400円+税)