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本の紹介(No.28)
「
黒い花びら」(村松友視著)
1959年(昭和34年)、安保反対のデモが吹き荒れる中、都内のジャズ喫茶に
入り浸っていた著者村松友視は、第一回レコード大賞を受賞した「黒い花びら」に
出会う。従来の歌謡曲とは明らかに異なるテイストを持ち、それでいて日本的な
オリジナリティーを備えた曲「黒い花びら」。歌っていたのは、ロカビリー出身の
異色の新人歌手、水原弘であった。この曲の大ヒットにより、新人にして早くも
大歌手になった水原弘。しかし、ヒットは続かず、次第にその人気に翳りが差す
ようになる。
本書は著者が折りに触れ、リアルタイムで出会った水原の姿と、彼の私生活に
まで関わった作詞家、永六輔の回想、そして当時の週刊誌の記事を交えて、
等身大の水原像を描き出している。
後輩歌手の前座をつとめるほど落ちぶれた水原弘。しかし、彼の歌唱力に
惹かれたスタッフの献身的な努力が実を結び、「君こそわが命」によって水原弘は
奇跡のカムバックを遂げる。しかし、不遇な時代から続けていた放蕩三昧の生活
により、借金は天文学的数字にまで膨れ上がり、彼の体は既に病に蝕まれていた。
歌が子供や、若者でなく、大人を対象に作られていた時代。そんな時代に、
芸能界にほんの一瞬輝き、そしてはかなくも散っていった天才歌手水原弘。その
半生を直木賞作家の著者が愛惜の思いで綴った作品。いわゆる60年安保時代に
青春時代を送った世代にとっては、懐かしさを感じさせる本でもある。
(O・R)
(2001年・河出書房新社・ 1,500円+税 )
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