本の紹介(No.34)

「文書鑑定人事件ファイル」(吉田公一著)


  著者は1931年群馬県の生まれ。東京写真短大を卒業、国家地方警察
本部科学捜査研究所に入り、法科学研修所教授、科学警察研究所付属鑑定
所長等を歴任した。その間1987年に発生した金賢姫の偽造パスポートの
鑑定も行った。本書の表紙には、その金賢姫の偽造パスポートの写真が
使用されている。本書第2章(偽造文書)には、この事件が解説されていて、
スカシの違いから「偽造」と見破ったてんまつが語られている。ちなみに、
本書は4章に分かれている。第1章は筆跡、第2章は偽造文書、第3章は
印章偽造、第4章は贋幣鑑識。著者の幅広い専門分野には驚くばかりである。

  誤字やくせのある字から殺人犯人や火災保険金目当ての放火犯人を
追いつめていく。そんな叙述が随所にあり、推理小説を読むようなスリリングな
場面も多い。本書は、警察、官公庁、銀行、保険会社、商社等の若い社会人に
是非とも読んで欲しい。それぞれの職場の中で時代とともに引き継がれてきた
仕事上のノウハウが簡潔にまとめられているからだ。とにかく、世の中には
「ワル」が多い。そんな連中に騙されないよう、本書をあらかじめ読んでおく
必要があるからだ。(O.R)

(2001年・新潮社OH文庫・676円+税)

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