本の紹介(No.36)

「『腐れ資本主義』の世を生き抜け」(青木雄二・佐高 信著)


  「ナニワのマルクス」といわれ『ナニワ金融道』でおなじみの青木雄二。
辛口評論家として電波や活字で活躍中の佐高信。この2人の組み合わせ
による激辛対談集である。2人はともに終戦の年1945年の生まれ。そして、
ズケズケものを言い本質に迫るという共通点がある。タイトルがチョット凄い。
「さあ、お楽しみ」というところであろうか。
  第1章『「腐れ資本主義」が正体を現しはじめた』の冒頭が「拓銀は
潰せるのに長銀・日債銀はなぜ潰せない」というテーマ。2人は次のように
意見を交わす。

  佐高……(中略)拓銀と長銀・日債銀を比較すれば、長銀などはある種、
余裕のある人が金融債を買っているような銀行ですから、一般の預金者に
関係があるのは、拓銀の方であって、潰せないのはむしろ拓銀なんです。
拓銀破綻後の北海道経済の低迷ぶりを見れば、それは明らかです。
  青木……それが民主主義的な考え方なんやけど、日本ではそうじゃ
ないわけで、やっぱり特権階級を優遇する考え方なんですよ。
  佐高……かつて金丸信が、日債銀で金融債を無記名で買ってカネを
隠していたでしょう。それと同じことを、政治家は長銀でもやっている。だから
長銀・日債銀を潰せない。自民党は当然ですが、民主党にしたって、本音の
ところでは長銀・日債銀は潰せない。
  
  以上のような過激なヤリトリがポンポンと続く。
  今、一部の経営者や政治家から、まるで神様のようにあがめられ、
したわれている相田みつをも、「青木・佐高組」の手にかかると、コテンパンだ。
書家の相田みつをは「真面目に生きる」「我慢しろ」といった趣旨のことを
「下手ウマ」みたいな字で色紙に書いている。
  佐高信は、「われわれが戦うべきなのは、むしろ相田みつをの諦めの
”哲学”というヤツですよ」と斬り込む(57ページ)。大衆が真面目にコツコツ
働き、世の中が悪くても諦める。そういった毎日を送っていてくれれば、
政治家や財界人は、もっけの幸いというわけである。このあたりを読むと、
墓の中からマルクスの亡霊が興奮して出てきそうな気さえする。相田みつを
(故人)の言葉は、実に都合よく体制側に利用されていることになる。ちなみに、
銀座には相田みつをの色紙などを並べた美術館がある。
  青木雄二は、お金をシティバンクに預けているそうだ。日本の銀行は信用
できないかららしい。そのシティバンクが毎年12月に大口預金者を招いて
パーティーを開く。その”大口預金者”というのが2000万円以上が基準だという。
青木雄二は、シティバンクからこの数字を聞き出したらしいが、こんなことを
活字にしてしまっていいのだろうか。

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