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本の紹介(No.7)
「
日本交通史論」
(日本学術普及会)
この本は、藤田明氏が生前に発表した多くの論文の中から特に
日本交通史に関係があるものを前編とし、後編には、新たに交通史に
関係の深い諸氏に論文をお願いして纏めたものである、と「序言」に
明記されている。序言の通り、前編には、古代から鎌倉時代までの
東海道に関する歴史的な考察による論文と、江戸時代の海運事業
並びに陸上交通、通信機関など多岐にわたる解説がされている。
鎌倉時代の東海道といえば、紀行文「海道記」「東関紀行」「十六夜
日記」などに宿泊地が明記されているように、街道が整備されつつあった
ものの、徳川幕府が国を挙げての街道整備を行うまでは、道路の修築、
旅宿の設備、山には道がなく、川には橋がない、盗賊が横行する、という
不完全の状態であった。従って、旅行をするには多くの困難を伴う事と
成った。この時代は、鎌倉に幕府が開かれ、京都には天皇がiいて、
政治的な観点から相互の交通が頻繁になってきたことは事実であろう。
江戸時代の交通のうち、最も重要視されたのが江戸を中心とした
東海道を含む五街道の整備であった。特に東海道は、商業都市大坂、
天皇を中心とする京都と徳川幕府の中心地江戸を結ぶ最も力を入れた
街道であろう。人、物、情報など幕府をささえる重要な幹線の一つであった
からである。
宿駅及び伝馬の整備はその第一のものであった。この制度は大化の
改新の昔から存在してはいたが、実際に機能していたかどうかは疑わしい。
豊臣秀吉は、駅伝について既に制度として実際に稼動していた事は事実の
ようである。徳川家康は、江戸に幕府を建設すると同時に伝馬制を東海道、
中山道、奥州街道などに駅馬・伝馬に関する命令を出し地子
(じし、広義の年貢)
の免除などを命じている。
また、通信機関については、「飛脚」に関して詳しく解説している。
”継飛脚”、”七里飛脚”、”三度飛脚”、”町飛脚”、”飛脚問屋”、”通馬
早飛脚”、”定飛脚”など飛脚の沿革から制度の実態について詳細に解説
している。
前編にはこのほか、「雑纂」として20以上の小論文を紹介している。
この
「雑纂」には、箱根山道、宇津谷、今切渡と荒井関
附
女手形、小夜の
中山、桑名七里渡などがある。宇津谷のなかで、「十団子」について詳しく
述べている。団子の由来は足利時代に遡ると言っている。古くからある
名物のようだ。江戸時代に書かれた紀行文の記事にほとんど出てくる
ようである。東海道名所記には
”坂のあがり口に茅屋四五十家あり、家毎に十団子をうる、其大さ
赤小豆ばかりにて、麻の緒につなぎ、古は十粒を一連しける故に
十団子などいふならし、…”
とあり、江戸時代には往来の人の名物土産の為に、十粒ずつ糸に繋いで
数珠の形で売ったものとみえる。
また、
今切渡と荒井関
附
女手形のなかで、寛文7年5月25日の
今切関所規定を紹介している。規定の一つに
”乗物にて上下の人は乗物の戸披通べし、女乗物は番の輩差図にて、
女に見せ可相通、公家門跡諸大名往還の節は前廉より其沙汰可
有之候間、不可及改、但不審の義有之者可為格別事、
とあり、武具、女人については更に精細に改方を規定された。
後編は、吉田東伍、三浦周行など著名な方々の小論文15件が紹介
されている。”本邦太古の交通”(喜田貞吉著)には、石器時代の交通、
古伝説と交通、について書かれている。また”古代の船舶の種類及び其発達”
(吉田東伍著)には、刳木舟
(くりきふね)
、両枝舟と猪名舟、舵機及び櫂櫓、
遣唐使舶と唐船、関船、朱印船及び安宅船、千石船など船に関しての興味
ある記事が載っている。(船については、「
ものと人間の文化史
船」
(須藤利一編、
1968年初版、法政大学出版局)
に詳しく書かれている)
飛脚について、”飛脚の変遷を論ず”で詳しく解説している。飛脚の名称は
鎌倉時代になって初めて使われたようである。東鑑・百練抄等に鎌倉飛脚、
六波羅飛脚、関東飛脚の名称が生じた、としている。
以上項目の一部について紹介したが、この本が発行された後、
「日本旅行史」
(吉田十一著、昭和11年、日本交通学会)
、「日本の路」
(大島延次郎著、
昭和30年、至文堂)
、日本とヨーロッパの間の「日欧通行史」
(幸田成友著、昭和17年、
岩波書店)
など交通史については数多くの出版物が出されている。また、徳川
時代の街道については、「五街道細見」
(岸井良衛著、昭和34年、青蛙房)
に街道
筋の町、その様子、宿場、里程、など極めて詳しく明記されている。地域の歴史、
由来などについては、「大日本地名辞書」
(吉田東伍著、明治33年、富山房)
を参照する
事を進める。(M.D)
(藤田 明・大正5年・日本学術普及会)
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