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本の紹介(No.20)
「日本貨幣金融史研究」(関山直太郎著)
この本は、昭和18年太平洋戦争最中に発行された歴史書である。
目次の内容を紹介したい。
第一篇 十人両替考
第二篇 京都絲割符仲間の鑄餞事業
第三篇 手形雑考
第四篇 英国東洋銀行と我国の関係
第五篇 明治初年に於ける金銀貨の流出問題と其の対策
第六篇 我国に於ける銀本位貨幣法制定計画
第七篇 貨幣及び物価施設に関する青崎祐友の建議
第八篇 旧諸藩の外国負債処分
第九篇 河州丹南藩の藩債
第十篇 升屋の藩債
第十一篇 信州高遠藩の藩債
第十二篇 明治二年五月の財政に関する御下問書に就いて
第十三篇 「看板」(Kambang)貿易考
第十四篇 長崎貿易に於ける関税
第十五篇 明治維新に於ける長崎仮政庁
第十六篇 遣欧施設宛書翰2通
第十七篇 菅沼貞風と其の南方経綸策
これらの論文のうち、7篇は「経済史研究」、3篇は「社会経済史学」、
2篇は「経済商業論纂」、1篇は「経済」に夫々発表されたものを、再発表
しており、4篇だけが本書に初めて発表されたものである。第16篇以外の
論文は全て大蔵省在勤中に書かれた、と本書の”自序”で述べている。
第17篇の菅沼貞風は「大日本商業史」(明治25年9月)の著者で
”菅沼貞風君伝”として「大日本商業史」の中で詳しく紹介されている。
第三篇の手形に就いては、徳川時代に大坂で行われていた手形の
制度について述べているものである。手形の詳細は、”日本経済史
(大正14年、竹越與三郎著、日本経済史刊行会・第6巻)に詳しく説明されているので、
参考にして頂きたい。大坂では、商人と全国各藩との決済はもちろん、
商業上の一般の取引についても各種の手形を用いていたようだ。
その他の論文でも関西方面の金融制度について書かれているものが多く
見受けられる。商業の中心が大坂であり、貿易の中心が長崎であった事から
当然の事である。
第八編の旧諸藩の外国負債については、徳川幕府がとった政策である
藩の独立性が幕末において裏目に出たものであり、諸外国に対しては
明治新政府は何としても保証しなければならない問題であった。明治3年から
明治8年までの外国負債に対する支払総額は345万円になった。負債金額が
最も大きかったのが輸入代金支払未済分で、凡そ185.4万円(内軍艦汽船
買入72.3万円)、藩経費補充現金借入分75万円であった。明治初期に
おける国債の残高の推移を見てみると
国債残高(千円)
明治3年 4,800
明治9年 53,929
明治14年 231,127
外国への借金の支払を優先したため国内では国債による金融政策を
取っていたことがわかる。(池田)
(関山直太郎著、昭和18年、新経済社)