本の紹介(No.21)

神道秘伝 行事寶典」(山田照胤著)

  この本は、大正14年創刊された。日本神道における各種行事に
ついて紹介している。全体を神道編、神道古実編、神祭編の3編に
分けている。
  第壱編 神道編では、神、神道、宗教について、その意義を説明
している。
  第1章で著者は、”神”を”上
(かみ)である”と定義している。”神”に
ついては、学者によって多くの説が唱えられている。「神祇辞典」

(山川鵜市著、東邦出版) によると、”神”を『カムガミ(照覧)』(忌部正通)
『カガミ(鏡)』
(山崎闇斎、僧契沖、度会延佳、吉川惟足)、『カガミ(光見)又は
アカミ(明見)』
(谷川士清)、『カミ(上)』(新井白石、賀茂真淵、伊勢貞丈、
小山田與清、藤原時縄、谷重遠)、『カシコミ(畏)』(荒木田久老)、『カビ(彼霊)』
(平田篤胤)、『カクリミ(隠身)』(斎藤彦麿)、『カクリ(隠)・クシビ(霊)』
(八田知紀)、『カム(噛又は醸)』(大国隆正)、『カクレ(隠奇)・ミツル(満)』
(堀秀成)、『カミ(日)』(多田義俊)など、種々様々な定義を行っている。
  第2章では、神道の発生とその歴史を他の宗教(仏教、キリスト教、
道教など)と比較することにより、神道の信仰を解いている。
  第3章では、宗教としての神道、神社神道、宗派、教義と経典などに
ついて説明している。
  第弐編 神道古実編第壱章では、まつりごと、祭儀、出雲系祭祀、
生霊鎮祭、祭前修祓、などについて説明している。特に、祭前修祓では
”潔(みそぎはらい)”について、体を裸にして水で”黄泉国(よみのくに)
穢汚垢(よごれ)を流し清める”ことを詳細に記述している。また”潔祓”と
”大祓式”の違いについても説明している。
  第弐章では、神社、神主、神官、神職、神子、神楽、などのついて
説明している。神職の順序は、上から宮司、神主、禰宜、祝、となっている。
  第三章では、神祭調度名目解となっており、神社建築物(鳥居、神門、
回廊、など)、神殿調度(御霊代
”潔祓(みたましろ)、御帳台(みちょうだい)
(たたみ)、壁代(かべしろ)、など、幣殿及拝殿調度、社頭の調度(門帳、
眞榊、榊台、四神旗、など)、庭上祭調度、神饌奉献(しんせんほうけん)調度、
祓所調度、式典調度、依紋など。
  第参編 神祭編では、祭式原理(場所、神座及び所定座、礼、拍手、
祝詞など)、祭式用語解、祭式行事作法、一般祭式行事、公式祭典、
私祭式(工事、家宅、諸雑祭、結婚式及び関係諸祭、葬祭)が紹介
されている。
  第四編 祈祷編では、祈祷、禁厭、、諸祈祷祭厭様式、鎮魂祭、
祓式など。
  最後に、”公私祭祝詞集”が60ページにわたって記述されている。
  本書は、神社で行う年中行事すべてが紹介されており、何かの
行事があるときに事前に一寸目を通しておくと非常に参考になるのでは
ないかと思う。神主など神社の神職になる人にとっては、有効なマニュアル
になるのではないだろうか。
(池田)

(山田照胤著、明治42年、神宮館伝習所)

神社についての参考資料
  日本宗教史(土屋詮教著、大正14年、自修社)
  神祇辞典(山川鵜市著、大正13年初版・昭和53年復刻版、東方出版)
  神祇史年表 上・下(兵庫県神神社庁、昭和16年初版・昭和42年再版、明文社)
  東京都神社史料(東京都神社庁、昭和41年)

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